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延命寺 寺とパソコン

 

title 寺とパソコン

<VOL.41>

 

文科系のためのパソコン入門書ほめけなし

無事発見!!(前回の記事を読み返せば分かる)
「文科系のためのパソコン入門書」はたくさんあるが、「文科系」といっても範囲が広 い。仏教文学も仏文学も文科系である。仏教文学研究者が仏文学研究者向けの本を買ってもしょうがない(こともないだろうけれど)。
ここでは絶版を含んだ(二冊目を注文しないと在庫があるのか絶版なのか分からないので)各分野の入門書を紹介しておく。私が買ったものしか書いてないので他にもっといい 本があると言われても責任はとれません。発行年や価格は省略しました。

総論
坂村健『痛快!コンピュータ学』(集英社)
コンピューターとは何かということを教えてくれる本。別にトロンのことしか書いてないというわけではない。ただしゴルゴ13の挿し絵と関係した記述は数箇所だけ。

インターネット
有賀妙子・吉田智子『インターネット講座』(北大路書房)
インターネット理解に本当に必要なことが書いてある本。著者達は主としてUNIXを使っているが、インターネットではユニックスが使われているといっても党派的なことは書いてない。
アリアドネ『調査のためのインターネット』(ちくま新書)
同『思考のためのインターネット』(ちくま新書)
主に調査研究のためのインターネットのアドレスブックであるが、紹介されているウェブアドレスのいくつかは変更になっているだろうから、基本的なところからリンクをたどるのが良いだろう。

民族学
杉田繁治『コンピュータ民族学』(共立出版)
民族学のことだけ書いてあるのではなく、データベースやシミュレーションを活用するヒントを与えてくれる。

歴史学
名著出版から中野栄夫『コンピュータ歴史学のすすめ』が出ていたが本棚の奥に入ってしまって探し出せません。
歴史文献を扱ううえでは閏月や改暦などに注意が必要(改暦に気がついていない文書がある)。日本年号の元日がグレゴリオ暦やユリウス暦の何年かということだけで年号対照をしてしまう場合と、その日がグレゴリオ暦やユリウス暦の何月何日かということで年号対照をする場合の両方があるそうです。ちなみに「ころは元禄十五年、十二月の十四日」はグレゴリオ暦の何年何月何日でしょう。この事件の元禄十五年を西暦何年としているかに注意が必要です。
ロシア歴とグレゴリオ暦のずれなどは私は知りません。
仏暦は日本で明治に決めたものよりも南方仏教で現実に使われているものを利用するべきだと思うのですが。

心理学
中澤清『心理学のおもちゃ箱』(ナカニシヤ出版)
副題は「Macintoshと行く自分探しの旅」なのでウィンドウズで使えないなどと文句 は言わないように。もっともハイパーカードもマックに付属しなくなったそうだ。

経済学
笹山茂『マッキントッシュで経済学』(日本評論社)
一応あげておく。「アウトラインプロセッサの活用法」も書いてある。
宿南達志郎『eエコノミー入門』(PHP新書)
高校の時の同級生の書いた本なので、というだけでなく、ネタを提供してくれたので。

英語学
一般に可もなく不可もなしという本が多い。ここでは中野美知子編『英語教育とコンピュータ』(学文社)をあげておく。
ワードとエクセルについて書けばいいのなら楽なもんだなーと思ってしまう。英語版と日本語版のウィンドウズを共存させる方法は書かなくていいのだろうか。多言語の混在はマックの方がはるかに簡単だが、英語については英国語版のマックOSは出ないことになったので今後はどうなるか分からない。

フランス語
フランス語学者の本は当たり外れがある。
霧生和夫他『パソコンでフランス語,Ouf!』(駿河台出版社)
8人の共著。このころからマックかウィンドウズか、どちらでもいい、どちらでもダ メ、という神学論争が行われている。
戸口民也『パソコンで欧文を書くために』(駿河台出版社)
神学論争ではなく実際に西欧語を扱うにはどうすればいいのかが知りたければこれ。 PC98-NXやMacOS8は付記や付録に書かれている時期だが基本的には今も有効。
中尾浩・伊藤直哉・逸見龍生『マッキントッシュによる人文系論文作法』(夏目書房)
よくまとまっているのだがいかんせん記述が古い。ソロライターとかTeach Textといっても今ではどのくらい知っているだろうか(私はあったということしか知りません)。当然インターネットの利用法についての記載はない。
中尾浩・伊藤直哉『Windows95版 人文系論文作法』(夏目書房)
同じ著者がウィンドウズでの活用法を書いたものだが今度はワード・エクセルが安定しないうちに書いたので、「使い物になるのはワードしかない」が「ワードで文字化けすると直せない」という役に立たない記述が頻発する。エディタの活用法は大変参考になるのでこの部分だけを再版してもらいたい。
山崎吉郎「コンピュータでフランス語」『ふらんす』(白水社)
連載は終了したがマックやウィンドウズでフランス語を扱う方法が大変参考になるのでぜひ単行本を出版して欲しい。
仏教学者に一番参考になる入門書は国文学者や中国学者のものに多い。出版されて十年以上経っているのに原理的な意義を失っていないものまであるのは驚異である。漢字が十分に扱えない中で、いかに漢字を含む文献を扱うかという主題を追い求めたためだろう。
漢字と仮名だけで済むからまだ楽だ、などとケチを付けるのではなく、素直に敬意を表したい。

国語・国文学
伊藤鉄也『新・文学資料整理術 パソコン奮戦記』(桜楓社)現(おうふう)
多分、今回取り上げた本の中で一番古い。しかし一太郎の第二版に期待をかけて待つ時代に出版された本書に「今でもコンピュータはメーカーの論理で出荷されている」「今日は新製品であっても、明日はもう旧製品として店頭から消えていく」「今はコンピュータを購入した人の過半数が、半年もしないうちにしまったと思う」などという箇所を見つけると、いったいコンピュータ業界に進歩はあったのかと思わずにはいられない。
P.78に女子校で『はじめてのC』を読んでいるのを生徒に見られて・・とあるのは「二人の関係はAまで、Bまで、Cまで・・」という言い回しがあった時代だからなのだが。Cというのはプログラム言語ということは注を付けなくてもいいでしょう。
P.156の8インチの標準フロッピーなどというものは知らなかった。キューハチ用ソフトのお試し版を収録した「5インチのミニフロッピー」は持っているけれど、使えるパソコンは持っていない。
中村康夫『国文学電子書斎術』(平凡社)
漢字を含むデータベースを作るときの注意が特に参考になる。
安永尚志『国文学研究とコンピュータ』(勉誠出版)
価格に見合った価値はあるけれど。外字表が今昔文字鏡のどの文字に当たるかということが分かれば便利になる。
同『文科系のための情報検索入門』(平凡社)
副題は「パソコンで漱石にたどりつく」です。
中野洋『パソコンによる日本語研究法入門』(笠間書院)
研究用プログラムを収録した付属フロッピーは1.2Mなので注意。
『電子メディア時代の文章法』(學燈社)
「非常に素晴らしい」とは私には思えないけれど、参考になる人もあるだろう。
『人文科学データベース研究』創刊号~第6号(同朋舎出版)
今さら探し求めなくてもいいけれど、執筆している方々の努力によってパソコンが人文学でも使われるようになってきたのである。

中国学
内田慶市・野原康宏『マックで中国語』(ひつじ書房)
パソコンで中国語を扱うための本はたくさん出てきたが、まず読むべきなのは相変わらずこれである。文字化けした場合の解決策が参考になる。
二階堂義弘・千田大介・池田巧『コンピュータで中国語Win&Mac』(大修館書店)
最近のものではこれ。題名以上のことが書いてある。Linux・FreeBSD・Tron・Palmと くれば中国語の本かパソコンオタクの本か分からなくなる。
何徳倫『中国インターネット案内』(日本エディタースクール出版部)
これもマックとウィンドウズ両対応。ただ後書きにもあるように本書の記述がいつまで有効かが分からない。
漢字文献情報処理研究会『電脳中国学』(好文出版)
多言語の混在はマックの方がいいが、中国語の入力に関してはマックはなかなか面倒である。ウィンドウズでやりたいという場合はこれ。中国語版と日本語版ウィンドウズを 共存させる方法も書いてある。ユニコードやウィンドウズ2000に対する見方は甘いが、便利な場合は使ってしまおうというのは一つの見識である。確か一太郎で中国語(例えば簡体字)を入力できる市販ソフトもあったような。
石川忠久・松岡栄志『漢字とコンピュータ』(大修館書店)
視点の定まらない本。漢字に関しては阿辻哲次氏(私と専攻は違うが同じ学部の同級生。友達にしてもらっておくのだった)の著作を読むほうがよほど役に立つ。
ロシア語についてはユーラシア研究所「特集パソコンでロシアをさぐる」『ユーラシア 研究』第九号があるが今探しだせるかどうか、というよりも日本語版ウィンドウズ3.1に英語版ウィンドウズを組み込む方法を読んでも役に立つかどうか。
(ハングルについては本の形のものは探し出せなかった)

言語学
上田博人『パソコンによる外国語研究への招待』(くろしお出版)
主にスペイン語研究について書かれている。「WINDOWSを消去する」というまことに 過激でしかもまっとうな項目もある。『パソコンによる外国語研究』(I)は数値データの処理、(II)は文字列処理。

多言語処理
多言語処理に関してはUNIXとマックになる。超漢字はまだ多言語処理ではなく多文字処理だというのは当たっている。もちろん多文字処理が有効な場合も多い。ナーガリー文字が読めない、中国語の発音がわからない場合にキーボード入力しかなければかえって困る。
三上吉彦・池田巧・山口真也『電脳外国語大学』(技術評論社)
多分今は入手できない。しかしハードディスク(メモリーではない)20MBなどというパソコンで努力をしていた著者達のおかげで、今我々が「メモリー20MBなんて少ない」などとぜいたくが言えるのである。せめてどこかで「編者・著者の横顔」を読むように。
三上吉彦・町田和彦『パソコン外国語製品ガイド'95』(オーム社)
発行年で今も役立つかどうかが分かってしまうが、参考資料にあげられている言語や文字のうちいくつを知っていますか。100や200じゃないのだよ。
三上吉彦・関根謙司・小原信利『マルチリンガルWEBガイド』(オーム社)
付録Aの「ブラウザとOSから見た対応言語表」にはWebExplorer(OS/2です)の場合まで載っていてエラソーな顔がしたいときにも役立つ。
吉田智子他『マルチリンガル環境の実現』(トッパン)
7人の共著。主としてUNIXでの方法を書いている。当然私は理解できない。でもUNIXの人っていうのはヨーロッパと東アジア以外ではタイやベトナムぐらいしか知らないのだろうか。
 

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