Enmeiji延命寺

延命寺 寺とパソコン

 

title 寺とパソコン

<VOL.64>

 

鉄の鎖か金の鎖か


パソコンが使いこなせると誤解されているので、仏教関係の会の庶務を引き受ける羽目になったが、前任者から受け取った書類のデータが、特定ソフトの形式で保存されていた。文書の方はいわば定番となっているものだったので他のワープロソフトでも見ることが出来たが、住所録の方はどうにも読み込めない。この宛名ソフトはマック版はほぼ定番だが、ウィンドウズでは爆発的に売れているというわけではない。もう一つ前の担当者がマック版で作ったデータを前任者は苦労してウィンドウズ版で読み込んだのだそうだ。マックでも読める形式ではないようなので、開くのをあきらめてウィンドウズ版を購入したが、よくよく説明書を読むとマック版で読み込むときはマック版で読み込むことが出来る形式で保存する必要があるようだった。しかもそうしても古いマック版では開くことが出来ない。

ウィンドウズ版で開いて、他の宛名ソフトでも使える形式で保存し直して活用することにしたが、今度はせっかく買ったその宛名ソフトが「この形式は読み込めません。」と言ってくる。宛名データは変更しなければならないのにデータ変更は一方方向にしか出来な い。

これは宛名ソフトの例だが、ワープロその他のソフトでも「独自形式」で保存するよう に促すソフトがある。レイアウトも何もしていない原稿だけでも、だ。この独自形式がいつまでも使えるのならばそれでも構わないが、残念ながら新しい独自形式の文書は古い独 自形式では開けない場合が多い。ワープロ専用機を使っていたころは他社のワープロで作った文書を開くことが出来なくて弱ったものだが、パソコンも同じ道をたどっているわけだ。

独自形式だということを指摘してくれないどころか、独自形式で保存しろなどと注意されては素直な初心者は従わなければならないのかと思ってしまう。一度独自形式で保存するようになってしまえば正しい保存の仕方を知るまでは「鉄の鎖」から逃れることは出来ない。

独自形式ではあっても「独自形式だ」とちゃんと指摘してくれるものもある。これも鎖につながれていることには変わりないが、「金の鎖」であろう。鎖を逃れることが出来なくても、せめて金の鎖の方を使いたい。

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