Enmeiji延命寺

延命寺 寺とパソコン

 

title 寺とパソコン

<VOL.63>

 

コンピューターで仏教学


日本印度学仏教学会の創立50周年記念大会で「インド学仏教学におけるコンピュータ利用の現状と展望」というシンポジウムが開催された。 http://www.inbuds.org/jaibs/panf6.htm

まず最初にこのシンポジウム実現に尽力した人々と司会者・パネリストの方々に満腔の 謝意を表したい。
「京の昼寝」という非常に腹立たしい言葉があるが、いくら研究情報がインターネット に出ていても、誰でもすぐ探しだせるということではない。今まで探しても見つからなかった情報の所在しているアドレスがシンポジウムの配付資料によって初めて分かったとい うことも多い。分かっている人には当然のことでも、よく分かっていない私などは堂々め ぐりを繰り返していたが、今後の展望と課題もおぼろげながら見えてきた。

コメンテーターがいないので、司会者がコメントを付していたが、私もいくつかコメン トをしておきたい。その前に論文を書く人にお願いしておきたい。
それは「インターネットの・・」と書く場合は注にアドレスを書いておいて欲しいとい うことである。ある紀要に載った論文の「徳永先生の校訂したマハーバーラタ」が公開されているという箇所に興味を持ったのでいくつか検索をかけてみたが、出てきたのは「徳永校訂に基づく・・」というものばかりだった。やっと所在が分かったが、ダウンロード の前に読むことが出来る説明が欲しい。
http://tiger.bun.kyoto-u.ac.jp/mtokunag/skt_texts/Mahaabhaarata/

さて、徳永発表で明らかになったのは「デジタルテキストの場合も作成方針がはっきり していることが必要だ」ということである。紙に印刷することが最終目標としても、最初から印刷だけを考慮していると、データ分析に不適切な形式で入力をしてしまうことにな りかねない。徳永作成の「sandhiをしていない形」のデータは「語の検索」にはその方が いいからである。
「コンピュータで出来ないことを探すためにコンピュータを利用している」という発言 の真意は今一つ分からなかった。「コンピュータでかなりのことが出来る」という意味な のか、それとも「コンピュータで出来ないことまでやらないと研究ではない」ということなのか。

李発表の配付資料にあった「研究情報の公開を」という提案には大賛成である。
いくつ か研究に役立つサイトを紹介している個人ページがあるが、個人の努力に任せておけばい いというものではない。
要望としては高麗大蔵経が、特定のOS・特定のソフトで作成された事情をもっと詳しく 知りたかった。
http://ebti.dongguk.ac.kr/

ウィッテルン発表はペルセウス計画を参照しての「仏教電子図書館」実現への展望を述 べるものであった。壮大な構想にわくわくした聴衆も多かっただろうと思う。 http://www.perseus.org/
が、世の中はオープンソースが常に勝利しているわけではない。(だいたい徳永発表以外はオープンソースでないOSで行われた。)中国の新しい文字コード規格についてどのよ うに考えればいいのかの判断も聞かせて欲しかった。
中国学者はこちらできちんと論議している。 http://www.jaet.gr.jp/index.html

発表者の提供しているもので一番多く利用されているものはミュラー発表の「東アジア仏教語辞典」かもしれない。最初は個人的な利用のためであったものが、インターネットで公開すると他の研究者からもデータを提供されて充実したものになっていくという、じつにインターネット的な研究とは何かを教えてくれるものであった。
しかし疑問点はとりあえず二つ。
漢字はユニコードのCJK統合漢字を利用しているが、どの字形を使うのか、佛と仏のように固有名詞としては使い分けが必要だが述語としてはどちらでも良いものとの区別はし なくてもいいのか。
デモンストレーションでは「四天王寺」のピンイン表記が出てきたが、現実には使われていない(と決めつけることは出来ないが)発音を記載する必要はあるのか。
もちろんピンインで日本の固有名詞が検索でき、日本式の発音で中国の地名が検索できるほうが便利で はある。
http://www.human.toyogakuen-u.ac.jp/~acmuller/
http://www.human.toyogakuen-u.ac.jp/~acmuller/dicts/ddb-intro.htm

四人の発表者と司会者はXMLに関する造詣が深いが、なんのことやらよく分からない者 の一員たる私は「注を組み込むことの出来るデータ形式」という理解で逃げておこう。

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