Enmeiji延命寺

延命寺 寺とパソコン

 

title 寺とパソコン

<VOL.67>

 

ネット利用の仏教学研究


パソコン初心者がパソコンでやりたいのは「ワープロとインターネット」だとやや揶揄気味に言われてきたが、仏教学でもインターネットは「当然の前提」になってきている。

ネットの利点
インターネット利用の利点はいくつも上げることが出来る。
まず、素早い発表が出来るということである。紙の紀要だと年一二回の発行では同感・異議・参照、いずれの場合も時間がかかる。
そして私は「既存分野に囚われない発表が可能」という点も上げたい。研究発表の事前審査は既存の分野の発表の質を高めるには必要なことだが、現代仏教事情などはどの分野に入るのか、仏教と他教の混在地域の研究は仏教学になりうるのか。かなり前、仏教系の学会で山岳信仰と仏教に関する発表をした時に、私が記紀風土記の資料を多く取り上げたせいか、司会者(文献学的研究者)が「仏教学かな?」という反応を示した。民族学や宗教学・国文学・地域研究等々には間違いなく入るが、狭い意味の仏教学(文献学・哲学)に入らない研究は審査ではねられるか、水準が低くても無批判に通ってしまうかのどちらかになる恐れがある。ネットで公開するのは自分の判断・責任ですればいい。
そしてインターネットに公開する利点には「計らずして共同研究が出来る」ということ があげられる。コメントを早くもらうことが出来るし、もっといい資料や論文を教えても らうことが出来るかもしれない。

ネットの欠点
しかし当然のことながら、欠点もたくさんあげられる。
まず、どこに情報があるのかが分かりにくい。研究者のためのウェブサイトがどこにあるのか、どこから始めればいいのかが、すぐには分からない。
研究者の所属機関が変われば、データのありかが変わってしまう。どこかにリンク切れの無いリンク集が必要である。

データ形式の問題
15年前の「インド学仏教学研究におけるコンピュータ利 用」のシンポジウムでは 坂村健氏の講演があったが、その時に指摘された課題は依然として残っている。
それはデータ形式の問題である。

日本印度学仏教学会の第52回学術大会ではサンスクリットのローマ字翻字の方法に3種 が見られた。
例えばaの長音にAの字を用いる方法。aaと書く方法。aの上に短い横線を書く方法。
印刷する場合は今の多くのパソコンで3番目の方法が可能になっているが、公開するデジタルテキストとしては1番目か2番目の方法のどちらかにしてもらうべきではなかろうか。aの上に横線を引く形式ではちょっと古いパソコンでは検索しにくい場合がある。セレブラルの表記なども(Latin-2ではなく)アスキー形式でデータを作ってもらった方がいい。
漢字の場合はもっと複雑になる。字形で分類するか、字義で分類するかという永遠のイスの投げ合いに陥るからである。日中韓の漢字を使い分けたり分けなかったりする仏教学の場合は「とりあえずユニコードの統合漢字」というわけには行かないだろう。
どちらもウェブに表示する場合は大きな問題はない(解決不能ではない)。あくまでもデータを再利用する場合の問題である。

最小限度どのようなデータ形式かという説明を付けておくことが必要だと思う。

研究者の技量
OS依存・ソフト依存の問題

その分野では専門家だが、パソコンでは初心者という多くの研究者が特定のOS特定のソフトによるデータを作成するとそのソフトを利用している研究者以外には使いづらいということにもなる。永遠に使えるソフトというものは多分存在しない。
しかしとりあえずは『仏教研究のためのパソコン活用法』という本が望まれる。紀要類にはいくつも関連論文が出ているが、書店で購入できる形のものは少ない。
それこそ「インターネット上に集めてもらう」形でも良い。

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