延命寺 寺とパソコン
<VOL.44>
トロン 未来との互換性
トロンについて「未来との互換性」という言葉を使ったのは多分中村正三郎氏だったと 思うのだが、超漢字が話題になるにつれてトロン(この場合はBTRONビートロン)をどう評
価するかという話題も出てくるようになった。 仏教文(仏文じゃないよ)にはビートロン スゴイのにそんな素振りを見せないビートロンってスゴーイ
トロンの先駆性 挿入移動がチョー(死語)簡単 実身・仮身が基本です シンクロナイズはやや苦手 ビートロンの専門誌は『トロンウェア』(パーソナルメディア)しかない。専門的な記事も多いから興味の有る特集だけ購入するのもよいだろう。ゲームは32号の付属フロッ
ピーにオセロが収録されている。ビートロンは真面目なつくりなのだが画面に子猫を走り 回らせることができるから開発者は猫好きなのではなかろうか。
以上の記述は今(2000年)では役に立たない個所も多いが、トロンの先進性はまだまだある。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
以下は98年の原稿だから超漢字には当てはまらないところもあるが、なぜお寺までお寺 では実用にならないOSに四苦八苦していたのかという反省を込めて再録しておく。超漢字
には当てはまらないところはどこかということは実際に超漢字を活用して見つけて欲しい 。
ふだんの文章にはJIS第二水準までで十分だという人が多いが現代日本の地名人名まではだいたい書けてもいざ仏教語を書こうとするとあの字もこの字もないないないという事になる。観音・地蔵などの「菩薩」は正式には「ボダイサッタ」と言うがこの内「タ」
の字は「補助漢字」が使えて初めて書くことができる。たとえば『般若心経』の中では補 助漢字が三字必要になる。この補助漢字がたやすく使えるOSがビートロンである。
ビートロンについては坂村健『コンピュータいま何がなぜ?』(読売新聞社)に詳しい 。「皆が使っているからということでパソコンを選ぶからいつまでたっても使いやすくならないのだ。」というのには大賛成である。使いにくいものほど売れるというのはメーカーにとってパソコンは売るものであって使ってもらうものではないということも理由だと思う。マイクロソフト社のある製品を使うと他社の製品が使えなくなる仕様にしてあったことがあるとも書いてある。やはりビートロンについては「未来との互換性」という形容
が良く似合う。
『アイコン』(アスキー)96年7・1号にとり・みき氏が面白いマンガを描いていた。二人の人物がパソコン関係の専門用語を使って話をしているところに「TRONのマネ
だー!!」と言う人物が乗り込んでくるというものだ。マンガの意図とは別にトロンは確 かに早くから先を行っていた。少ないメモリーで利用できるところがブームに釣られてメ
モリー不足の粗大ゴミとしか言い様のないパソコンを買ってしまった人には最適だろう。 トロンの良さはまずは分かりやすい操作性。30分で使えるとまではいかなかったが三日もあればまず大丈夫。パソコンを買っても結局ワープロが基本だが日本製のOSだけあって専用機なみの扱い良さはおすすめ。これで縦書きができて変換効率があがればまったく言うことはない。今は「ことえり」なみ(と言うより初期のワープロ並み)。そして8メ
ガメモリーでも十分な軽さ。16メガまでしか認識しないということはそれで十分すぎる ということ。16メガでは動くだけちゃんと使うには32メガ以上は常識などというどこ
かのOSとは大違いである。あのOSをいれた8メガメモリーのパソコンは今も使われて いるのでしょうか。
ビートロンの意義については美崎薫『ハイパーメディア徹底活用術』(パーソナルメデ ィア)にも詳しいが、私が文章作りに使うのはもっと単純な理由である。どんな文章を作ってもたいてい前後を入れ替えたり付け加えたりしたくなるが、ビートロンではそれがまことに簡単にできる。もちろん一般のワープロソフトなどでも語句を付け加えたり削ったりするのは割合簡単だが、前後の入替えとなるとコピー、ペースト(本当はカット、ペーストで良いのだが一瞬画面から消えるのは気持ち良くない)などと少しややこしくなる。
ビートロンの場合は移動する文章や語句を選択して、つまんで、はめこむ、だけで済む。 コピー、ペーストと違って画面上の操作なので安心して実行できる。思いつくたびに何行かを書き留めておき次にまた何行かを書き加える、そして前後を入れ替えるというつまり
はアウトラインプロセッサーとして使っている訳であるが、それがまことに易しいのであ る。そんなことはどんなワープロでもできると言われそうだが、画面から消えるのではな
いところが分かりやすいのである。
体験版が『トロンウエア』(パーソナルメディア)45号に付いているからDOS/V 機をもっている人は書店で取り寄せてもらうとよい。漢字変換や印刷はできないがゲームまで付いているから操作法は見当がつく。フロッピーのままで実行させればやや遅いが試
しに使うのだから考える時間があってかえって良いかも知れない。文章を作って移動の仕方を理解してから終了時に「廃棄して終了(他のOSの「保存せずに終了」に当たる)」
を選べばフロッピーの内容は変更されない。自分のパソコンで使えることが分かったら注文するだけである。新しいウィンドウズ95は他のOSとの共存がますますしにくくなっ
ているそうだから(もちろん両立を可能にするソフトはある)、今ではやや遅いと感じら れるペンティアムより前の機種などがかえって良いかも知れない。製品版でもフロッピー
五六枚とはDOS並みの軽さだと想像できるだろう。
ビートロンを活用するには実身(じっしん)・仮身(かしん)を理解しなければならない。実身は本体という理解でかまわないと思うが、仮身というのは実身を反映するという
面ではアイコンに似ているし、実身との繋がりという意味ではエイリアスやショートカッ トに似ていないこともない。ビートロンの入門書には図書(実身)と図書カード(仮身)
の関係に譬えたりしているが、鏡に写った姿で考えてみよう。鏡の前の姿(実身)と鏡に 写った姿(仮身)は対応している(左右が逆だなどとは言いっこなし)。鏡をいくつも使えば(仮身複写)鏡像(仮身)はいくつもできるが一つの姿を変えればすべての姿が対応して変わる。鏡の前に双子を立たせれば(実身複写)鏡に写る姿(仮身)は二つでき、双子の内の一人が姿を変えても変わる鏡像は一つだけである。(まあこんなややこしい説明
を理解しようとするより実際の操作を覚えたほうが良い。)
いくらビートロンが優秀とは言っても他のOSと同じく苦手な事もある。マックやウィ ンドウズは同じ名前のフォルダがあると「入れ替えますか」とか「上書きしましょうか」
と聞いてくるがビートロンでは何も言わない。同じ名前で内容の異なる実身ができても気 がつかなかったりする。これを防ぐには「仮身複写(かしんふくしゃ)」をすると良い。そこで仮身複写の練習をしてみたのだがなかなかうまくいかなかった。そこで説明書をよ
く読むとまず複写したいものにポインターを合わせて左ボタンを押す(これで選択ができ た)。そして左ボタンを押したまま右ボタンも押し移動してから今度は右ボタンを押した
ままで左ボタンを離し最後に右ボタンを離すというちょっとややこしい操作が必要だった 。もっともこの操作を覚えてしまえば、フロッピーの実身をハードディスクのほうに仮身複写し、こちらで記述を変更すれば終了時に「更新して終了」を選ぶだけで良くなった。
別にフロッピーを開かなくても自動的に実身の内容が更新される。
また挿入移動はチョー簡単でも、文章を複写するときは複写する部分を選択して編集メ ニューから「トレーへ複写」してから複写先の場所を決めて「トレーから複写」を選ばな
ければならないから、ここは他のOSの「(クリップボードへ)コピー、(クリップボードから)ペースト」とあまり変わらない。といってもビートロンのトレイは一つしかデー
タを置けないクリップボードのようなちゃちなものではない。
肝心なのはしっかりした設計の上に足らないものを足していくOSを選ぶか、だめな設計 のものを修理しながら使っていくOSを選ぶかという選択である。
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