延命寺 寺とパソコン
<VOL.33>
漢字が使えるという「悪夢(!)」
「発売当日に不具合を発表した始めてのOS」に目をくれずに超漢字を買った皆さん。組み込みはどうすればいいのか分からないという人もあるでしょうが、それはhttp://btron.comで勉強してもらうこととして、なぜパソコンで多くの漢字が必要かもう一度復習しましょう。 《なぜ多漢字が必要か……仮想問答》 問 JIS第二水準までの7000字でさえ使い切ることが出来ないのになぜそれ以上文字が必要なのか 答 仏教に必要な文字がない。「ボダイサッタ」の「タ」の字は別の文字で書き換えるわけにはいかない。また人名地名で必要な文字が含まれていない。タレントの「クサナギ」の「ナギ」、中国の政治家「トウショウヘイ」の「トウ」、中国の工業地域「シンセン」の「セン」などなど。 問 JISの第三・第四水準の漢字にそれらは含まれるのではないか。 答 これらの漢字の大部分は既に補助漢字に含まれているから、補助漢字が使えればそれだけでこれらの漢字を使うことが出来るのだが、補助漢字の制定基準があいまいだったということで、新たに制定し直したというのが第三・第四水準の漢字である。しかし実際にはシフトJISの空き番号を利用するので今後の拡張が困難。中国や韓国の人名地名で今後どのような漢字が使われるようになるかを予測することは出来ない。 問 国際的にはユニコードを利用することで漢字不足も解消し、多国語の同時表示もできるようになるのではないか。 答 現在コンピューターなどに実装されている規格では日中韓の漢字を同一の文字番号で表している。確かに一カ国語だけで利用するのなら日本の場合は使える漢字が増える。しかし同じ漢字が他国では字体が異なるということを示す場合は多国語の漢字フォントを組み入れる必要がある。中国語や韓国語の場合はユニコードの漢字の字体に間違いもあるそうだ。 問 ユニコードの新しい規格では「言語情報」などを付加して同時に多国語の漢字が利用できるようになる。 答 まだ実装する予定の基本ソフトはない。 問 単に字体が違うだけの漢字に別々の文字番号を付けていては「ワタナベ」さんはどのように書くのか分からない。 答 個々に選択してもらうしかない。「士」の「ヨシダ」さんと「土」の「ヨシダ」さんのそれぞれに歴史が有り、どちらかを排除するのはおかしい。 問 印刷の時に必要な文字だけを作成すればいいのではないか。 答 確かにAという文字についた番号を入力するとBという文字を印刷するようにすることは出来る。(これが「機種依存文字」はなるべく使わないようにという理由でもある。)しかし、「士」の「ヨシダ」さんと「土」の「ヨシダ」さんのどちらが多いかという研究や両方が必要な場合の名簿作成などが出来ない。 問 現在のパソコンで多漢字を使うにはかなり高性能の製品でないと無理なのではないか。 答 「今昔文字鏡」も「超漢字」も一般的に使用されているパソコンで扱うことが出来る。両者ともに今後も収録する文字を増やすことの出来る規格になっている。 実は仏典でもJIS第二水準までの漢字で書けないのはわずか一パーセントにも満たないという研究がある。しかしその零点数パーセントの中に「ボダイサッタ」の「タ」の字が入っているのは致命的である。もし「イエズスキリスト」の「ズ」と「ス」の区別が出来ないソフトがあったなら(前述のOSの不具合の一つに「特定の場合に濁音・半濁音などの区別ができない」がある)キリスト教徒が納得するだろうか。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
パソコンで多くの漢字を使えるようにしようという計画に関しては「それほど多くの漢字をすべて使いこなす必要があるのか」とか「パソコンの性能では無理なのではないか」とか無知による批判も多くありました。しかし今では「今昔文字鏡」と「超漢字」によってその問題は解決するめどがついたと言えます。(「今昔文字鏡」は製品版を買わなくても『パソコン悠々漢字術』(紀伊国屋書店)で研究すればよいでしょう。)
私はJIS第三・第四水準という規格は今では誰も話題にしない新JISキーボードと同じ道をたどるのではないかと思っている。補助漢字なら辞書が既にいくつもでている。(『一太郎10のすべて』(ジャストシステム)になってやっと一太郎での補助漢字の使い方が載るようになった。)
理論ではなく実物で主張を実現した多漢字プロジェクトの勝利である。そしてパソコンではそんなに多くの文字が使える必要はないと言っていた面々にとっては「悪夢」の時代が始まったのだ。
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・「新年の希望」
・メールの賀状
・頑張らないパソコン入門
・老後はパソコン
・「買い」か「待ち」か超漢字3
・家電としてのパソコン
・アップル 1周遅れのトップランナー
・プライバシーは数千円
・パソコンの明治時代
・IT講習で(多分)教えてくれないこと
・がっかりLモード
・貧しいIT
・B(ukkyo)TRONを使おう
・コンピューターで仏教学
・鉄の鎖か金の鎖か
・喜捨か会費か
・非公正に怒れ
・ネット利用の仏教学研究
・遅い・高い・マズイ ISDN
・「ワープロは?」「富士通です。」
・メモ・メモ・メモ・メモ でも忘れ
・「簡単」が勝ち(除くパソコン)
・独占は衰退を招く そして
・ITは効率を落とす