天竺ロック vol.9
vol.9
-2月26日延命寺でもシヴァラートリー-
- 河野亮仙-
シヴゥラートリーとナタラージャーのシンボリズム
ヴェーダのバラモン教ではブラフマー神が創造の神、ヴィシュヌ神が維持の神、シヴァ神が破壊の神とされています。シヴァは寂静、清浄、常楽という意味。2017年のマハー・シヴァ・ラートリーは、インド各州の暦によっては違いますが、パールグナ月の2月25日です。シヴァリンガが出現する日、シヴァとパールヴァティーが結婚する日ともいわれます。前夜からオーム・ナマー・シヴァーヤと一晩中真言や賛歌を唱えて断食して清めます。罪障が消滅し、病気も治るといわれてます。
一ヶ月28日半の旧暦で満月から数えて14日目の夜です。真っ暗闇となり、朔日から再び月が満ちて再生していきますので、破壊の神シヴァ神の夜としてふさわしいのかもしれません。日本の暦では大寒も過ぎ、やがて暖かくなり春を迎える2月か3月にマハーシヴァラートリーがきます。インドでは日に日に暖かく、いや暑くなります。
何もなくなってから再生、創造が始まるので、ブラーフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三神は一体です。シヴァはターンダヴァ・ダンスによって世界を生み出す創造の神、時間の神カーラとしても知られています。また、シヴァ神と女性神シャクティも一体とされています。
さて、時間というのは時計が刻んでいると思っているかもしれませんが、カウントダウンを始めたのはあなたです。あなたが生まれる前に時間は存在しないし、死ねば時間は終わります。ほかにどこにあるのでしょう。あなたが鼓動を始めたときから世の中が存在するように、シヴァ神が踊り出してからはじめて時間が動き出し、宇宙が生み出されてきます。あなたが踊ることによって時間と空間を刻みだしているのです。
また、あなたが男か女か知りませんが男と女は一体です。シヴァ神だけでは存在できず、それを支えるものが必要です。それは地球です。母なる大地です。インドの宗教は大地の神への崇拝が基本です。シーターも畝という意味で大地の神です。
支えるもの、保つものとはダーラナー、女性形ではダーラニー、陀羅尼です。般若心経の真言、「ぎゃていぎゃていはらぎゃてい、はらそうぎゃてい、ぼーじそわか」も女性神、般若波羅蜜菩薩を讃えるものです。
そのシヴァ神と女性神を結びつける愛の力が重力です。これによって惹き付けあって一体となります。インド舞踊は重力の踊りです。ターンダヴァでしっかり大地、子宮を奥まで突いて子供を孕ませてください。それで宇宙ができあがるという意味が秘められていると思います。
あなたが活動を始める、舞い踊ることによって宇宙が展開していく、意識を宇宙中に及ぼしていくという宇宙的遊戯。そういうイメージで踊って、世界を浄化して、再スタートさせてください。踊れない人はオムナマシヴアーヤ、そして朝まで断食。
星川京児(ほしかわ・きょうじ) -プロフィール-
音楽プロデューサー。
1953年香川県生まれ。
民族音楽を中心に様々なジャンルの音楽制作、専門誌制作に携わる。
NHKの「世界の民族音楽」のDJはじめテレビ、ラジオ番組の司会やパーソナリティとしても出演多数。
映画『ラストエンペラー』では、音楽を担当した坂本龍一のブレーンとして活躍。
代表作にキングレコード『ワールド・ミュージック・ライブラリー』、『日本の伝統音楽』<レコード大賞企画賞>、『日本の民族音楽』<芸術祭賞>など。
■バックナンバー
|Vol.9 2月26日延命寺でもシヴァラートリー
|Vol.8 あしたのジョーとニューミュージックマガジン、そしてビートポップスの頃~その1~
|Vol.7 ロック、この一枚 -最高の飲み友達、星川さん逝く-
|Vol.6 ロック、この一枚 -プロコルハルムが好きだった-
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|Vol.4 ロック、この一枚 -ブラス・ロックの輝き-
|Vol.3 ロック、この一枚 -現代音楽とロック-
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