プロフェッサー星川の天竺ロック情報 vol.5/来迎山地蔵院延命寺

プロフェッサー星川の天竺ロック情報

Vol.5 ロック、この一枚 −サイケデリックの時代−

 

 60年代後期のロックシーンは本当に面白かった。スコット・マッケンジーの『花のサンフランシスコ』を聴いたのは中学生の時だが、この時代3年間でものすごく変わってしまう。同時にイギリスのストーンズやビートルズ、どころかクリームに填まってしまったのだからおかしいのだが、ほとんどはラジオである。だからビートルズも『レディ・マドンナ』や『ペーパー・バックライター』といったシングル・カット曲が今でも印象に強い。

 なにせあらゆるジャンルの音が一斉に流れ込んできた時代。歌謡曲には演歌から民謡、時には『バラが咲いた』やカヴァーだが『花はどこへいった』といったフォーク、ついでにGSまで。日本のロックという扱いではなかったけど。そこでシャンソンやサンレモのカンツォーネ、もちろんカントリーからタンゴ、ラテン、ハワイアンまでなんでもありだった。

 深夜番組の日本放送の「オールナイトニッポン」の導入なんてマリアッチ。まさにジャンルにタブーの無い時代。結果的に、音楽に対する窓口だけは広がった。テレビでは朝の情報番組でアニマルズ(この時は『スカイ・パイロット』を演っていた)を知り、ジミ・ヘン、クリームを聴き始めた頃でもある。そんな状況で出会ったのがビートルズでありストーンズ。アニマルズやマンフレッド・マンなどを経て、アメリカへと広がってロックというものの洗礼を受けることとなってしまった。

 だからアメリカ西海岸のバンドを知ったのも必然と言えば必然。あらゆるタイプの音があった。さすがにこうなるとラジオだけでは難しい。とはいえとっかかりはラジオ。まず金がない。で気に入ったものを追っかけはじめた。

 最初のショックがジェファーソン・エアプレイン。どちらかというとブリティッシュに傾いていたのだが、それを変えたのがサンフランシスコのフラー・ムーヴメントというか、ヒッピー文化。若輩ながら、音楽はもちろん当時の閉塞感を変えるものを求めていたのだと思う。

 ジェファーソン、最初に聴いたのはもちろん「Somebody To Love」だ。「White Rabbit」も好きだった。その時買ったのがRCAの『BEST OF JEFFERSON AIRPLANE』。なにが凄いって、盤がカラフルなサイケデリック色。東芝の赤盤同様のカラー盤である。磨り減るまで、といってもいまも聴いているけど、ノイズなどこれもサウンドだと思えば少しも気にならない。どの曲もCDで聴けるけどその気にならない。この盤、もう絶対に手に入らないだろうな。

 この時代に聴いたグレース・スリックの声。そのインパクトといったら、地方在住の少年へのインパクトが半端じゃなかった。僅かかもしれないが、そんな少年、もしかしたら少女もいたのである。

 時々観ることのできた映像もほとんどがフィルモアのサイケデリック・ライトの過激なやつ。どこか中心が見届けにくい不思議なサウンド。ヨーマ・コーコネンのギターとジャック・キャサディの絡むようでタイトなベース。もちろんスペンサー・ドライデンのドラムも凄い。彼がデッドと組むのも判る。

 なにより切り裂くような、突き放すようなグレースのヴォーカルが凄い。もちろんマーティン・バリンとポールカントナーの自由参加型、いや絶妙な絡みのコーラスも新鮮だった。後の彼らの活躍、というか音楽界における幅の広い影響力は考えられない不思議な混合状況だった。

 私見だが、同時期に現れたジャニス・ジョプリンと比較すれば、グレースの個性がより強烈になる。ジャニスが炎とすれば、グレースは氷。これが一番判りやすい。ジャニス影響力のポイントはジミー・ヘンドリックスとジム・モリスンと同時期に亡くなったことだろう。

 変な言い方だが、生き残ったものは辛いのである。グレースは、近年引退して、絵など好きなことをしているらしいがもったいない。ジャニスの完成度は死ぬ前の方がはるかに良かったけど、どちらかというとビッグブラザー時代が好き。これも時代の刷り込みかもしれないのだが。

 同様にジェファーソンに入る前のグレート・ソサエティ時代の盤を聴いても明確で、その個性は天性のものといえよう。思えばこの二人、ブルースとフォークというルーツを持っている。その時に鍛え上げた歌唱力が、結果的にロックの世界に繋がったのかもしれない。つまり、生でも、パワフルで魅力的ということだ。

 国は違うがジュリードリスコール(Torinity)やリンダ・ホワイル(Afinityy)といったイギリスのロック・ディーバたちも今はどうしているんだろう。まあ、調でべればある程度のことは判るのだろうが、そこまでの執着はないから。いずれにせよソウルかジャズ・シーンに近いテクニックと声量を持っていた歌手だが。そういう意味でルネサンスの超絶音域のアニー・ハズラムや、また渋くて美しいサンディー・デニーや可憐なジャッキー・マクィシー、強靱なマディ・プライヤー(念願叶って構内ライヴを発売できたのは嬉しかった)といったトラッド系とは異なる。この辺りはまた機会があったら書いてみたい。そういえばフェアポート初期には、イギリスのジェファーソン・エアプレインなんて紹介されてたそうだが、これは判るようで、よく判らない。

星川京児



 星川京児(ほしかわ・きょうじ) −プロフィール−
星川京児(ほしかわ・きょうじ) 音楽プロデューサー。
1953年香川県生まれ。
民族音楽を中心に様々なジャンルの音楽制作、専門誌制作に携わる。
NHKの「世界の民族音楽」のDJはじめテレビ、ラジオ番組の司会やパーソナリティとしても出演多数。
映画『ラストエンペラー』では、音楽を担当した坂本龍一のブレーンとして活躍。
代表作にキングレコード『ワールド・ミュージック・ライブラリー』、『日本の伝統音楽』<レコード大賞企画賞>、『日本の民族音楽』<芸術祭賞>など。




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