プロフェッサー星川の天竺ロック情報 vol.3/来迎山地蔵院延命寺

プロフェッサー星川の天竺ロック情報

Vol.3 ロック、この一枚 −現代音楽とロック−

 スプーキートゥースとピエール・アンリ  

 妙なディスクばかり紹介する気はないのだが、今回もまずロック・ファンの耳には入りにくかった代表的なアルバムだ。
 高校時代に買ったこの盤『セレモニー』。副題が『エレクトロニック・ミサ』と付いているように、基本的にはミサをテーマにした全6曲からなる組曲。雰囲気としてはブラック・サバスのファーストからブルー・オイスター・カルトに到る系譜のものだが、その世界は全く異なる。当時としても尖りすぎの、まさに元祖プログレとも言える、何とも不思議な印象を与えてくれた名盤?珍盤えある。少なくとも、ロック・ファンには評判のよかった全2枚とは全く異なる味わい。聴いた人もさぞやびっくりしたであろう。

 ちなみに東京FMではブラックサバスは放送禁止だったらしい。理由は「部落差別」に聞こえるかららしい。都市伝説とも思えるが、案外本当かも。FM東京をコケにしたタイマーズの『デイ・ドリーム・ビリーバー』は、RCサクセションを放送禁止にしたことへの告発ヴァージョンが有名だが、元々放送局なんてそんなもの。

 さて、スプーキートゥースは知る人ぞ知るブリティッシュ・ロックの雄。まあリーダーだったゲイリー・ライトはアメリカ出身で、なぜかイギリスのバンドを結成することになったが、サウンドは60年代後期のブリティッシュ・ハード・ロックとして評価が高い。この盤は3枚目のアルバムということになる。

 高校時代に買ったこのハイブリッド盤LPはすり切れてきたので買い直そうと思ってもどこにも見当たらない。2008年になってやっとCD化されたらしい。少なくともその間は幻の名盤であったことに間違いない。結局アナログしか聴いてないけど、音のざらざら感は案外アナログ向きだろう。

 とにかく異様な印象を与えてくれる作品で、ロックとミュージックコンクレートとの異種格闘技。ごく普通のロック・バンドに、具象音というか、テープにサンプリングされた自然音や、ラジオのチュウーニングのようなあらゆる音が被さってくる。実際これが原因でスプーキィーは解散したらしい。納得である。ゲイリー以外のメンバーは、金になればいいと思ったらしいが、できあがった音を聴いて仰天する。それが原因で、最終的には解散することなになった。ハードロックの雄として人気が出てきていただけに、それまでのファンは離れていったのも仕方がない。ところが、評論筋には極めて高い表を受ける。なかにはロックを全く取り上げない専門誌でも絶賛されたという。

 売れないだろうな、と買った時から思わせたのだ。結果的に、なんでもありのロックのなかでも、最もコラボレーションが際だった1枚といえよう。

 それにしてもピエール・アンリのロックっぽいこと。カールハインツ・シュトックハウゼンなどと並び、電子音楽、なかでもミュージック・コンクレートの先駆者。60年代初めの『チベット死者の書』『エジプト死者の書』から2008年のモーリス・ベジャールとの『ベジャール』。この作品には『孤独な男のためのシンフォニー』『ロック・エレクトロニック』『現代のためのミサ』まで全てのエッセンスが込められている。

 帯にはテクノのグランドファザー、ノイス・ミュージックの元祖なんて書いているけど、やっぱり同時代音楽として聴いたことがないんだろうな。若造が演るとこうなってしまうのだという偏見か。

 この時代、どんなものでも貪欲に取り込んでいったブリティッシュ・ロックだが、現代音楽と演ろうというバンドはさすがにいなかった、と思う。この盤も持ちかけたのはピエール・アンリからで、それにゲイリー・ライトが乗ったというのが真相らしい。ついでにフィリップスが人気にあやかったのか、スプーキー・トゥースの盤として出そうとしたから一悶着あったらしい。

 この手のことはよくある話で、日本のレコード会社や音楽事務所が、他から助っ人、もしくは無名のミュージシャンを入れると、ジャケットには名前がないなんてことは日常茶飯。たぶん今も変わらないだろう。これも契約書を書くのを嫌がる、つまり後でなかったことにする会社の常套手段である。

 ピエール・アンリ・エディションのリヴァプール・ミサを聞いてみればすぐ判るが、60年代からこんなにロックっぽいのかと驚いてしまう。人によったらひょっとして『セレモニー』よりいいかも、とまで思わせるロックっぽさ。捜せば、こんな音が出てくるかもしれない。

 何ともいいグルーヴ感。ヘッドフォンで聴くと最高だ。

 今回も、日本盤は出ているけど、ほとんど誰も手にすることのなかったアルバムを取り上げた。手元にあるLP、珍しいだけでなく、時代を変えるパワーを秘めていた、あくまで秘めていただけで、結局消えてしまった盤が多いが、何かの参考になれば幸い。異論はあるだろうけど、あくまで主観の問題なので悪しからず --

星川京児



 星川京児(ほしかわ・きょうじ) −プロフィール−
星川京児(ほしかわ・きょうじ) 音楽プロデューサー。
1953年香川県生まれ。
民族音楽を中心に様々なジャンルの音楽制作、専門誌制作に携わる。
NHKの「世界の民族音楽」のDJはじめテレビ、ラジオ番組の司会やパーソナリティとしても出演多数。
映画『ラストエンペラー』では、音楽を担当した坂本龍一のブレーンとして活躍。
代表作にキングレコード『ワールド・ミュージック・ライブラリー』、『日本の伝統音楽』<レコード大賞企画賞>、『日本の民族音楽』<芸術祭賞>など。




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