精霊と女性の国 北タイ

39 スープ・チャター「寿命を延ばす」
  チャターは「寿命」あるいは「運勢」と訳すことができ、人間の幸不幸をブンとは異なる方法で説明している(ブンについては1316参照のこと)。スープ・チャターは、良きにつけ悪しきにつけ重大な変化が起こったとき、その変化を宇宙の運行に関連づけ、変化に対応するよう、チャターに影響を与えようとする儀礼である。
  パンの場合は37歳という年齢が厄年に当たるので、スープ・チャターをするのだという。

  三角錐の一辺は2本の竹で、その下端には50センチほどの白い細木が、パンの年齢の数、つまり37本束ねてくくりつけられている。そして枕とござ、もみ米を入れた素焼きの水がめと生米を入れた鍋、一房のバナナ、カンタンのかごが置かれている。
  カンタンとは儀礼を始めるための盆で、僧侶など儀礼を行う人へのお礼の品が入っている。ここではスアイ(バナナの葉に線香、ろうそく、生米、花、10バーツか20バーツの紙幣などを乗せて円錐形に巻いた物。15参照。ここでは中にビンロウジュの殻も)とお菓子、豚の足を揚げた物が入っていた。

  ポナン・ケーオが村の僧侶の前でひざまずき、カンタンの籠を捧げ持ってお経を唱え、儀礼は始まる。
  パンが三角錐の枠の中に入って手を合わせる。三角錐の辺にはところどころにビンロウジュの殻を結びつけた綿の縒り糸が伝っていて、僧侶がその一端を両手にはさんでお経をあげる。こうして僧呂とお経のもつ仏教的力が糸を通して伝わり、三角錐の中の空間に満ちるのである。
  スープ・チャターは本来は仏教的な観念に基づくタンブン儀礼とは由来を異にするのだが、チャターに影響を与える力は仏教的な力である。

  お経のテンポが速くなり、パンは僧に聖水をかけられ、手首に縒り糸を結びつけられて、儀礼は終わる。あっけないほど淡々とした儀礼だ。
  imageパンが終わると妻と3歳の息子も同じことをしてもらう。北タイでは幸福も災厄も個人のものではなく家族で共有されるので(2021参照)、チャターに影響を与える儀礼も当人だけでなく、家族に対しても行う。

  スープ・チャターは人間ばかりではなく、家や川や米にも行われる。家を住み替えるとき、雨が降らなくて川の水が涸れそうなとき、そして収穫された新米などに対してである。

 

川野美砂子

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