インディカ舞

〜 花祭りの内幕 〜

お練り行列
お陰様で、四月十五日に一週間遅れの花祭りが無事終了しました。無事というのは、今回、二つの問題がありました。  
出演者の都合等で一週間遅らせて、たまたま復活祭と重なってしまいました。この日当たりから結婚式シーズンが始まったようで、関係者が何人も結婚式で引っかかりました。いつもやっている、四月第一週の土日は行事が多いのですが、第二週にずらしても同じでした。  
そのため、出演者、出仕者を集めるのに苦労しました。お坊さんがなかなか集まらない。十人くらい出仕しないと立派な大般若転読会にならないので大変です。
本当は、天台宗の坊さんだけで大般若をやれば、声明も、もう少しちゃんと出来たのですが。結局、埼玉県仏教青年会の他宗派の坊さんも中に入って元気よく「降伏一切大魔最勝成就」とやります。それはいいんですが、そうすると受付や会場案内などの外回りのスタッフが足りなくなるのです。  
サリーを着た女性今回は、初めて屋外で練り行列やパフォーマンスを行いました。去年、本堂の中で雅楽をやりましたが、これはやっぱり屋外で、自然と共に聴いてみたいなと思ったからです。  
また、お練り行列も祭礼にはつきものなので、稚児行列(といってもウチの子中心)を仕立て、インドのサリーを着た女の子たちにも集まってもらい、先頭を歩いてもらいました。  
昔のインド寺院の祭礼では、デーヴァダーシーという寺院附きの踊り子が先導しましたので、それに倣ったわけです。
また、インドの祭りには象が出ます。大寺院は立派な象を何頭も何十頭も飼っていて、着飾ってお祭りに出すのが自慢です。花祭りで象の作り物を行進させるのは、その辺に由来しています。これもそのうち何とかしましょう。  
このお練り行列を近所のお寺さんから延命寺までと、考えたのですが、そうすると警察に届けて交通を止めたりしないといけないし、何より、スタッフが足りないので、今年は様子見で、境内だけを歩きました。  
それだけでもがらっと雰囲気が変わるので、何とか来年は外を歩いてみたいと思います。皆様にもご協力をお願いします。

馬鳴菩薩の曲
もう一つ苦労したのは、パフォーマンスの方です。今回は桜井さんの提案で、馬鳴菩薩作とされて天台宗に伝わる古い声明曲を復曲して踊りを付けてみようということになりました。馬鳴菩薩の唄を聞いて五百王子が出家したという伝説があります。  
馬鳴菩薩ことアシュヴァゴーシャは、一、二世紀頃の仏教詩人で、仏伝『ブッダ・チャリタ』が日本語に訳されています。仏教への改宗を勧める戯曲も書きました。  
復曲するに当たって、その声明譜を探さないといけません。天台声明には『六巻帖』が伝わっていて典拠になっていますが、ここにも入っていない珍しい曲です。
さいわい、天納傳中師が論文(『天台声明』所収、法蔵館)の中に声明譜を復元したのでそれを使わせていただきました。これは雅楽の『平調林歌』に相当するとされて雅楽譜も残っています。そこで、笙の音を伴奏に、インド舞踊で振り付けてみようという話になりました。声明とインド舞踊  
声明曲としては雰囲気が違っていて印度風?だと桜井さんはいいますが、わたしら素人には普通の声明、雅楽にしか聞こえません。それはともかく、ここまではまだ簡単。振りを付けるのがまた大変で、これは野火さんの役です。  
皆さん誤解されていますが、古代インドの舞踊は、今日、伝わっていません。彫刻でその面影を追うことが出来ますが、その音楽は完全に失われています。  
声明曲が本当に馬鳴菩薩のものだとすると、一、二世紀の曲ということになりますが、その詩は中国の史伝『付法蔵因縁伝』(大正蔵経第五十巻)にあるものです。北魏の吉火夜と曇曜の記したものですから、その頃(五世紀後半)のものでしょう。馬鳴菩薩が漢文に曲を付けることは出来ません。  
馬鳴菩薩がパータリプトラ、北インド・ビハール州の現パトナ市に教化に来たとき、ラーシュトラパーラという人物を主人公とした伎楽を作りました。無常を説いて仏教への帰依を勧めます。  
その哀愁を帯びた唄を聞いてパータリプトラの五百王子が出家しました。そのためこの音楽を聴くことが禁止されたと伝えられます。

非日常の世界
天台に伝わった声明曲に振り付けが付いていたわけではありませんが、古代インドのイメージで、東北インド・ビハール州の宮廷に伝わるセライケラ・チョウと呼ばれる仮面舞踊を参考にして創作しました。  
今日、インドで見られる舞踊と比べて、中世的なイメージを残し、ゆったりと舞い踊ります。舞踊に合わせて音楽のリズムが、多少、伸び縮みするところが興味深いです。  
この舞踊の基本ポーズは武術に基づいているといわれます。セライケラ宮廷の王子達が伝承していました。武術訓練の延長上にあるような、四肢の鍛錬になる滑らかな踊りです。  
先日、スーパー歌舞伎の内側という番組を見ていたら、やはり、京劇の殺陣もエイト・ビートで流れるように組み立てられていて、インドと共通しています。日本の殺陣は、途中でパタッとリズムを止めてみえを切ります。  
でも、あの豪華絢爛たる世界もさることながら、猿之助が公演がかかっている間にも、どんどんダメ出しをして、仕上げていく厳しさを見て驚きました。加藤和彦が音楽を付けているというのにも、実は驚いたのですが。ダメ出しが出ると、シンセですぐに修正するんですね。大変な作業です。  
さて、延命寺においては、笙の音を伴奏に、野火杏子さんの踊り、桜井真樹子さんの声明が、とっても不思議な異次元空間を作り出しました。お寺の境内というか、お墓の前でこんな仮面舞踊を繰り広げているのが、とってもシュールです。
当事者としてはこれがパフォーマンスとしてよかったのかどうか、いいにくいのですが、いつか、どこかの舞台の上でお披露目したいと思っています。その時にお目にかかりましょう。

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